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今でも色あせないレトロポップな車たち 日産パイクカーシリーズ

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▲デビュー当時を知る方にとってはお馴染みの日産パイクカーシリーズ。若い方々にとっては逆に新鮮に映るのではないでしょうか

革新的かつノスタルジックなパイクカーたち

「良いデザインは、革新的である」

これは機能主義で知られるドイツ人インダストリアルデザイナー、ディーター・ラムスが提唱した「良いデザインの10の原則」のひとつです。インダストリアルデザイナーは流行を取り入れながら、人々を驚かす革新的なデザインを提示しています。車の世界でも同じことが言えますね。

革新的なデザインと言われると、これまで見たことがないような近未来的なものをイメージしますよね。最近登場した車だと4代目プリウスは驚きましたし(2代目が採用した「トライアングル・シルエット」もセンセーショナルでした)、電気自動車でありながらスポーティなBMW i8も、まさに未来から来た車という雰囲気です。

一方で、革新的なデザインは未来を連想させるものばかりとは限りません。新しく登場したものなのにノスタルジーを感じるプロダクトにも、デザインの革新性を見いだすことができます。

日産が80年代後半から90年代初頭にかけて相次いで発売したパイクカーシリーズがまさにそれ。どれもレトロで懐かしい雰囲気をもちつつ、それまでにないデザインで大ヒットしたのを覚えている人も多いでしょう。Be-1(1987年)、パオ(1989年)、フィガロ(1991年)です。

この時代はバブル景気の絶頂期。世の中は高級志向が高まり、車も豪華な雰囲気のものが増えていきました。そこに突然レトロ色を全面に押し出したものが出てきたのですから、世間の耳目を集めました。

すべてはここから始まった Be-1

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▲Be-1のネーミングは複数あったデザイン案のうち、“B-1”案が採用されたことに由来するそうです

初代マーチ(K10型)をベースに開発されたパイクカーの元祖がBe-1。企画はコンセプターの坂井直樹氏が担当。直線的で高級感ある車がもてはやされた時代に、無駄をとことん削ぎ落とし丸みを帯びさせるという真逆のデザインをしたモデルが登場。

しかもどこかで見たことある雰囲気なのにどこにも存在しない。多くの人が驚き、この車を手に入れようとディーラーに殺到しました。

Be-1の新車時価格は129.3万~134.8万円。当時のマーチが60万円代から新車が買えたことを考えるとかなり高価ですが、限定1万台がわずか2ヵ月で売り切れたそうです。


冒険がテーマのパイクカー パオ

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▲日常に潜む冒険をイメージしてデザインされたパオ。車名はモンゴルなどの遊牧民が使う移動式家屋からきているそうです。当時の広告では、なんと恐竜と一緒に写っていました!

Be-1に続き、コンセプターの坂井直樹氏が企画したパイクカーの第2弾がパオ。ベースはBe-1同様、初代マーチ。鉄板をむき出しにしたようなデザインで、ドアヒンジも表に見えるような形になっています。さらにリアクオーターウインドウは上下に2分割され、リアハッチも上下に開くタイプにするなど随所にデザインの統一性を感じることができます。

ボディタイプは2ドアハッチバック以外に、屋根だけオープンカーのように開けられるキャンバストップ仕様が用意されました。パオは3ヵ月限定の受注販売でしたが、生産台数はBe-1を大きく上回る5万1000台以上でした。当時の人気ぶりがうかがえますよね。


『相棒』の杉下右京警部も乗っている! フィガロ

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▲クラシカルな雰囲気のオープンということもあり、当時は流行やデザインに敏感なモデルさんにも人気で乗っている人も多かったようです。車検証上は4人乗りですが、後部座席はミニマムサイズで実質2人乗り

フィガロもベース車両は初代マーチですが、なんと2ドアオープンカーに姿を変えています。コンセプトは“日常の中の非日常”。淡いボディカラーに白い革のルーフが街やリゾートに映えました。テレビドラマ『相棒』で水谷豊さん演じる杉下右京の愛車として使用されています。

杉下右京はブリティッシュスタイルのスーツを着こなす紳士ですが、実際にフィガロはイギリスでも人気が出たそうです。ちなみに彼が乗るのは黒ですが、これは純正色ではありません。また車名はモーツァルトの歌劇『フィガロの結婚』に由来します。

デビューは1991年のバレンタインデーで、販売台数は2万台限定。デビュー後には日産が『フィガロ・ストーリー』という映画を製作し、公開するなど、斬新な販売戦略が取られたことでも有名です。